タイでWordPress Meetupを開催しながら考えてきたこと

WordPress Advent Calendar 2014の第1日目です。高橋さん、今年もありがとうございます。

目次

家族でタイで暮らしています

妻と2人の子どもたちとで、タイの首都バンコクで暮らしています。
普段は WordPress を使って、お客さんのためにウェブサイトを作って暮らしています。

タイで WordPress Meetup をやっています

今日は、タイで WordPress のミートアップを続けてきて、考えたことについて書きたいと思います。

私自身、日本のWordPressコミュニティ、特にWordBench、WordCampにはとてもお世話になりました。
WordPressを始めて、買ってきた書籍を読んでひとりで勉強していたときには分からなかったことが分かるようになって、たくさんの人たちに出会うことができました。

そういう経験がバンコクでもできたらいいなと思い、また、私が受けてきた恩恵をバンコクの人たちにも経験してもらい、そこから更に開発者やビジネスが出てきたらいいなと思い、こちらでも毎月 WordPress Meetup を行っています。

今までに開いてきたMeetup

第一回は、Audrey Caiptalという会社で働きWordCampの開催サポートや関連書籍、ドキュメンテーションに携わるSiobhan Mckewonさんに、Getting Involved with WordPressというテーマで、WordPressを作る側・支える側として参加する方法について話をしてもらいました。

Audrey CapitalはWordPressの創始者の一人であるMatt Mullenwegさんが設立した投資や調査のための会社で、コアコントリビュータや2014年に行われたWordCamp KansaiにいらしていたSamuel Sidlerさんもこの会社の社員です。このイベントの日本語のレポート記事はこちらです。

第二回は、Pronto Marketingという在バンコクのマルチサイトを利用したウェブサイトの制作・ホスティング・マーケティング会社が話をしてくれました。この会社のやっていること、話してくれたことはWordPressを利用したビジネスについて、とてもたくさんのヒントを与えてくれました。このイベントのレポート記事も以前書きました。

第三回では、プラグインの作り方について。以下のようなスライドを作りました。

タイ語でのプレゼンに挑戦しています:)。実際には概ね英語で話して、コミュニティの方に翻訳をしてもらいました。 😛

第四回は、WordPress.comで販売できるテーマの作り方について、古くからのWordPressユーザで地元の人達からとても尊敬されているMennさんという方に話してもらいました。Mennさんは、私がバンコクに引っ越しをする前に「Bangkok WordPress」などのキーワードで検索をして辿り着き、バンコク視察旅行の時に一番最初にアポを取ってもらった方です。その時のインタビューがこちらです → 第14回 タイのWordPressエンジニア Menn さんとのWP談義、フリーランス談義! | お散歩ラジオ

第五回は、underscores/_s というスターターテーマについて、Warongさんに話していただきました。この会は、前回の.comでのテーマの続きのような形でやりました。

正しくテーマを作る方法について、どうやったら興味を持ってもらえるか、_sにどのようにして関心を持ってもらえるのかを考えた結果が、商売っけを出した第4回とその後の第5回のセッションの設定でした。

第六回は、html/css/jsフレームワークのメインどころ+子テーマというデザイナーさん向けのコンテンツでした。この時もスライドを作りました。

第七回は、ベトナムのPhilip Arthur Mooreさんがバンコクに来ていたので、座談会形式で開かれました。

第8回は、日本から来た宮内さんが、VCCWと同梱されているツール(wp-cli, grunt/gulp, PHPUnit, WordMoveなど)について。

日本語版のMeetupもボチボチやってます

この他にも、日本語で2回ほどやりました。また始動しようと思っていますが、なかなか時間が見つけられずにおります。

イベントをやりながら考えていたこと

いくつか、考えていたことがあります。

東京を目指す?

私はもともと東京に住んでいて、そこのコミュニティの出身です。WordBench東京/川崎/埼玉に参加していましたし、WordCamp Tokyoにはスタッフとして関わりました。特に、WordCamp Tokyo 2012では実行委員長を務めさせてもらいましたが、このときには1400人の人たちが参加しました。また、私が東京を離れる前の時点ではもう、WordBench東京が開かれるとすぐに数百人の人たちがサインアップするというくらい、コミュニティは盛り上がっていました。

そういうバックグラウンドで(WordPress的に)育ち、タイへ拠点を移すことを検討し始めた頃、WordPressのコミュニティを見回してみると、リアルで集うイベントは行われていないことが分かりました。ぜんぜん使われていないのかというとそんなことはなく、調べてみるとブログはいっぱいあるし、WordPressでできている大手の企業のサイトもありました。そこで、じゃあ少しずつでもいいからWordPressのリアルイベントをやってみようと思ったのでした。

ところが、そもそも見えているのが数百人規模のイベントでしたから、大きくしようと頑張ってしまったのですね。曜日や時間帯を実験してみたり、ウケがよさそうなコンテンツを企画してみたり、言語も英語だったりタイ語だったりを少しいったり来たりしています。最初は友だちができたりWordPressの話ができる人たちが集まれる場を作ろうとしていたつもりが、いつのまにか東京みたいなものを志向し始めてしまっていたのでした。

なんのためにやっているのだったけ?期

そんなことをしているうちに、ちょっとずつ辛くなってきました。そもそもなんのためにやっているのだったか、分からなくなるというか。微妙に盛り上がっていない感じがするというか、登壇側に回ってくれる人が少ない、発言が少ない、次回のアイディアを募ってもあまり出てこない。ネタを探すとか、いろんな人に声をかけるだとか、方向を見失いながら動いている期間がありました。ものすごく思い悩んでいたというわけではなく、ちょっと立ち位置を見失っている状態でしょうか。

そんな時に、ベトナムのハノイからPhilip Arthur Mooreさんがバンコクに立ち寄るので、座談会形式のMeetupをたしか平日に行うことになりました。ちょうど、ベトナムで最初のWordCampであるWordCamp Hanoiの実施を終えた頃でしたので、Campの話を聞いたり自分の考えていることなんかを話したりしてみたいなぁ、と思っていました。

会は、10人に満たない人数でした。PhilipさんはMacも何も持たずにやってきて前に座ると、じゃあ自己紹介しようか、と言ってそれぞれの人たちが自分のことを話し、ブログやプロダクトや会社のサイトがあればそれを見ながら、一人あたり10分くらいはかけて話していくというスタイルで進みました。また、WordCamp Hanoiについても、大きなことをしたかったのではなくて、開発者たちと親密なコミュニティを築くことがまず第一義であって、数にはまったくこだわっていないよと。こうやって話ができる人数でちょっとずつやればいいんじゃないの?ということでした。

彼のブログの記事にこんな一節があります。

Big never mattered to me as much as making connections, and the connections that I made at yesterday’s meetup were deeper than the connections that I made at WordCamp. No rigid schedule was needed. Chats happened organically. Everyone had a chance to introduce himself and share what he was working on. It felt like a small community.

Small

「大きさ」なんて、繋がりを作り出すことに比べたら大したことではなかった。そして、昨日の(小さな)Meetupで得た繋がりは、WordCampで得たそれよりもずっと深いものだった。きっちりしたスケジュール管理はいらなかったし、会話は自然に起こった。全員が自己紹介をすることができたし、取り組んでいることをみんなにシェアすることもできた。小さなコミュニティだと思った。

WordCamp には準備にものすごく時間をかけたそうですし、コミュニティの立ち上げ期にはアチコチの人たちに会いに行き、議論しながらWordCampの開催につなげたそうです。それなのに、そこで得られた繋がりよりも、このブログの記事を書いた前日に行われた小さな会合のほうがよかったということを書いてしまえるのは、けっこう大変なことだと思います。でも、本人はまさにそういう人だったなぁ、ということを感じるとともに、さて、自分はどうしていこうかな? Philipさんと同じことをすればよいわけでもないわけだし、という問答をさらに続けていくことになるのでした。

WordCamp Tokyo 2014のセッションでの質問

先日東京で行われたWordCamp Tokyo、世界のWordPress事情というちょっと大仰なタイトルのセッションに、モデレータ兼通訳として出させてもらいました。前半では、アメリカ、インドネシア、タイ、ヨーロッパでのWordPressの盛り上がりがどのようになっているのかということについて、話をしました。また、ひとりひとりのエピソードについても少しずつ触れていきました。

後半、私から登壇者の人たちに「ちょっと個人的な関心なんですが」とことわる形で質問をさせてもらいました。登壇者の人たちはWordPressのメジャーバージョンリード開発者、サポートフォーラムで私も何度も回答してもらっている方、WordPress.comのRest APIの開発者、GlotPressのリードデベロッパー、インドネシアのミスターWordPressと呼ばれている豪華な面々でありました。で、私の質問は「みなさんにとってコミュニティ、あるいはリアルのイベントってなんですか?MeetupとかWordCampとか。」でした。
当日聞いていた人にとって見れば、なんだアリキタリナ取って付けたような質問だなぁと思われたかもしれないですが、僕にとってはわりと切実な質問だったんです。

彼らからの答えは超シンプルで、WordPressの価値のコアのひとつであり強さである、これがあるから続けられる、貢献の形のひとつといったものでした。これらの言葉を緊張感のある場所でちゃんと聞いて(翻訳もしますので、会場で一番真剣に聞いていた人間の一人だという自身があります笑)、話している顔が本気で言ってるということを見ることができたのは大きかったです。また、答えの中に「WordPressのリアルのイベントは気軽に来て質問したり議論したりシェアしたりできる貴重な場所で、そういう場所に誰もがアクセスすることができるようにすることは、とても大事なことだ」というものがあり、初めてWordBench埼玉に参加した時(Multisiteの回でした)や初めてWordCamp横浜に参加したときの自分の受けた印象を思い出したりして、バンコクにもそういう場所があるといいなという考えを再確認しました。

WordCamp San Francisco のインパクト

WordCamp San Francisco は、世界中で開かれているWordCampの中でも特別な位置にあります。Mattの基調講演、多くのコアコントリビュータが所属するAutomattic社のお膝元、また、なんといっても世界初のWordCampが開催された場所でもありますし、年に一度の一番みんなが注目しているWordCampと言えるのではないでしょうか。

今年、そこへ運良く参加することができたのですが、本番が土日で、その後の月曜日がコミュニティサミットというコミュニティの活動に参加しているアクティブな人たちが集まって今後について1日中考える会、火水がコントリビューションデーという、前日準備を含めるとほぼ1週間丸々WordPressのことだけを考える日々でした。コミュニティサミット、コントリビューションデーではtracやフォーラムやmake.wordpress.org で名前を知っている人々、パーティーに行けばあのブログの中の人もあの会社の人たちも、という形で知っている人たちが勢揃いでした。

そんなサンフランシスコで一番印象に残ったことは何かと言えば、自分たちがやらなければ誰もやる人がいないのだという主体性を持って、WordPress.org が運営されていた、ということでした。

コア、コミュニティ、サポート、翻訳、メタ、アクセシビリティ、テーマレビュー、ドキュメンテーション、デザイン、教育、動画といろいろなチーム、それぞれが主体性を持って、自分たちの責任で物事を決めたり仕組みを作ったりチーム間で話し合いを行ったりしていました。せっかく一年に一度、いっぺんにこれだけのメンバーが集ったのだから、いつもはオンラインでのやりとりしかできないのだから、すべての問題はガチでオープンに話し合う、決められることは決めて言いたいことは言い、これからの一年間の活動を効率よく気持よく進められるようにするための3日間なんだ、という気合ですね。そもそもWordPressは感情も生活も時間的な制約もある人間がいろいろ学び、議論しながら作っているものだったのだなぁということを思いました。

もちろん、世界中の人達が自由に参加して少しずつの貢献が行われてそうしたものが長年積み重なって出来ているのが今のWordPressとそのコミュニティですが、それでもどこかにリーダーシップがないといけないはずで、それはMattや一部の偉い人達が決めているわけではなく(彼らはコンセプトがしっかりしていたり経験があるので影響力があることに間違いはないです)、基本的にはそこに参加して、役割を果たしている人たちの合意によって物事が決められているというのを見ました。

バンコクのコミュニティで、こういう感じのコミュニケーションに関われる可能性はないだろうか? ローカルでも主体性のあるチームができて、気軽に参加もできるし学びの機会を自分たちで作っていくこともできる、という体制はできないだろうか?ということが、私がサンフランシスコから持ち帰ったものです。

それから、世界中の大小のMeetupやWordCampの運営者が集まっていましたので、そこで聞いた話からは、地域によって文化によって、また主催者によって思っていたよりも多様な会がいろいろと開かれていることも分かりました。それもお土産にして戻ってきました。

バンコクミートアップは、方向性を決める会

この投稿が公開される前日、バンコクミートアップが開催されたのですが、私が8回のミートアップを迷いながらやってみて、その間に少しずつ仲間が集まってきたり、Philipさんの話で考えを深めたり、東京でみなさんの話を聞いたり、サンフランシスコでびっくりしたりしてバンコクに戻り、“Let’s talk about the Future of Bangkok WordPress Meetup & Community”というイベントを立ち上げました。

式次第は、以下のものでした。

  • 自己紹介
  • Meetupのネタのアイディア出し
  • 英語・タイ語をどう混ぜるか/分けるか、開発者・デザイナー・ユーザーをどう混ぜるか・分けるか
  • 場所、日付
  • オーガナイザーを誰にするか
  • WordCamp Bangkok !?

という内容を話し合いました。話し合われる内容はすべて英語とタイ語に翻訳されるということを徹底してみました。僕としての目的は、全員が好きなことを言ってもらう、主体的に関われるようにしておいて、バンコクのあり方を全員で決めるというものでした。

結果、月に2回、肩の力を抜きまくって全員で考えながらやっていくという形になりました。再スタートですね。8回の間は僕が旗を振ってガンガン進めないと進まないと思っていたのですが気がついたらいろんな人達が協力してやっていけそうな雰囲気が出てきて、素晴らしいです。タイ人が半分、外国人が半分。8回の間にも仲の良い人、毎回来てくれる人たちがいるようになって、WordCamp にも手を挙げてくれそうな人たちがいる状況になっているようです。

昨日の会議の結果、今後のアイディアとして上がったこと。

  • 基本的に月に2回(できれば固定の場所と日付)
  • 誰かがスライドを用意して行うセッションスタイルは人がいる時だけやる
  • 開発者向けとユーザー向けは分けてやろう(ただ、誰でもどちらにでも参加できる)
  • 言語については全部を翻訳するのは大変すぎるけど、ちょっと訳すとか参加できなくならない形を作る、あるいは、名言する
  • WooCommerce を使っている人が多く、WooThemes で働く開発者もいるので、WooCommerce の回をやってみよう。
  • translate.wordpress.org, glotpress を使った翻訳の仕方を習う会をやろう
  • お互いのコードレビューをする会をやろう。2 functions くらいの小さい何かを誰かが見せて、みんなで教えあう
  • サイトレビューの会をやろう。誰かが自分のサイトを見せる、悩みを言う、自慢を言うということを3分くらいでやって、それに対して参加者がワイワイ言う。
  • テーマレビューのワークショップをやろう。朝11時から1時間やってみんなでランチ、その後、3時間位やる。残った分はオンラインで続けてみる。
  • ユーザーが集まってベスト・プラクティスを作りつつ、開発者が時々見に行って技術サイドから間違っていないかどうかをチェックするプロジェクト。
  • 一人1分のプレゼンを行って、それをもとにグループを作って話すunconferenceスタイル

WordCampもぜひやろう、上記のアイディアを実行に移していく中でもう少し強いコミュニティになるのを待とう、オーガナイザーも増やしていこうとなりました。もう、今後が楽しみすぎます。

学び

最初にちょっと頑張る、仲間が集ったらみんなで決める、オープンであることをキープする、リソースを使い過ぎない形を作り上げるということが、知らないところでMeetupを立ち上げる秘訣かもしれません。

最後に、WordCamp Mauiの準備中で時々タイに来ているJonさんがMeetupの情報をシェアしてくれたこと、会合全体を翻訳してくれたPerthに大感謝です。

追記:コミュニティメンバーの方がコミュニティについて、バンコクのことも含めて、ちょうど今日書いていました。WordPress Anonymous – Bryce Adams

(おまけ)  bbPress, BuddyPress, GlotPress を1年間フルコミットで開発したいという方が、500万円のクラウドファンディングをしています。

残り11日間で、あと60万円です。彼が働いてくれると、

  • 翻訳プラットフォームのGlotPressが改善される
  • フォーラムが改善される
  • BuddyPressが改善される
  • *.WordPress.org が改善される

ということが起こります。興味のある方はお金を出してみてください。

BuddyPress, bbPress, & GlotPress development | Indiegogo

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