Shinichi Nishikawa's

祖母の本の電子化の件で出版社を回った感想(1):出版社から見た電子書籍

出版社に行ってきた!

僕のおばあさんの本を電子書籍にして出版するにあたり、
いくつかの出版社と話し合いの席を設けていただきました。

参考(前記事):僕のおばあさんの本を電子書籍化します

今回、話し合いをしている出版社は以下の6社です。(一部まだ途中&これから)

そこで話を聞き、考えたことについて書きます。

過渡期!様子見しながら考え中!ガンガン行きたいけど、、、

過渡期で各社業界動向を見守っているところがほとんど。
ただ、積極的に色んな動きをしている会社もありました。

インターネットで見られる意見として(僕もその口でした!)、
出版社は電子書籍化の動きに抵抗して、何かの利権を守ろうとしているのでは、という見方もありますが、あまりそういう感触を受けることはありませんでした。

出版社としては、きちんとした利益が出るのであれば、
既刊本をどんどん出していきたいのです。
電子書籍の波が来ようが来まいが、出版社は危うくなってきているので。

そうなんだけれど、色々問題があって、今はまだ動いていない。

それを、抵抗勢力っぽく見えてしまっているというのがほんとうのところではないですか。

出版社が面している問題/課題4つ

1. プラットフォーム/フォーマット問題

日本では、プラットフォームとフォーマットが定まっていません。

どんな可能性/選択肢があるのか↓。

2. コストが大きくて利益が出にくい問題

利益が出ません。少なくとも電子書籍だけでは。

初期の頃、「著者印税が70%になる!出版社いらない!」という話がありましたが、その分色んなコストがかかります。
新刊ではない場合についても同様です。
ここでは、既刊本を電子化する出版社にとってのコストをざっと。

たしかに、印刷費・紙代・取次ぎマージン・書店マージンはなくなるのですが、追加で以上のコストがかかります。

著者側から見ても、上記のようなコストがかかるとすれば、電子化によってなくなったコストの代わりに上記のコストが乗ってくるのに、価格が安くなっているんだから儲からないじゃん、という感じもします。

3. 市場が小さい問題

利益になるかならないか。
これは市場がまだ小さすぎるということもあります。

現状、電子書籍の市場は、2009年度、大まかに575億円。

参考:impress R&B

そのほとんどが携帯電話。
その9割がコミック。
そのほとんどがBLなどのアダルトコンテンツです。

今iPadを持っている人は、500万人位と言われます。
このままの販売ペースだと年内に1000万台、2011末に2000万台との予想を聞いたことがありますが、それにしても日本人全員が持っている携帯電話の10分の1くらい。

上記の参考リンク先によれば、スマートフォン向けコンテンツは2009年で約6億で、出版全体の約2兆円と比べると、ごく小さいです。

市場が少しずつ大きくなっても、プラットフォームやフォーマットが乱立していれば、投資を分散させないといけません。

4. 今後がどうなるのか分からない問題

果敢に挑んだとして、投資したフォーマットが廃れてしまうと、これまでの投資が無駄になります。
既に買ってくれた人たちへのフォロー(OSアップデートに伴なう対応や、他フォーマット提供など)も必要で、追い銭が発生します。
台頭してきた新しいフォーマットでもう一度作り直さないといけません。

そもそも今書店やAmazonで本を買っている層は、どの端末を選ぶのか。
もっとそもそも、電子書籍は流行るのか。

5. 権利問題

権利問題の処理も大変そうです。

著者と出版社の相補関係、出版社と印刷会社の力関係、絶版堂のモデルなんかも含めて書いていたら長くなってしまったので、別エントリーにして、2日後くらいにアップしたいです。
結論だけ言うと、複雑な権利問題をどう処理するのかの業界標準がないので、しばらく様子をみている出版社は多かったです。

まとめ

  1. プラットフォーム/フォーマット問題
  2. コストが大きくて利益が出にくい問題
  3. 市場が小さい問題
  4. 今後がどうなるか分からない問題
  5. 権利問題

上記のような問題があり、それぞれ大きな問題なので取り組みが進まなかったり、傍から見ていると何かを守ろうとしているように見えるということだと思いました。

一社、ウェブのことも電子書籍の可能性についても一通りネットで議論されているところは知っているし、そのプレーヤーになりたいけれども、コストやリスクを考えて我慢している会社もありました。
その担当者の方は、ネットの一部で出版社が抵抗勢力的に語られることに、悔しさをにじませておられました。

とはいえ、このような状況も、半年、1年、3年という単位で大きく変わっていくと思いますので、その中で僕もおばあさんの本をどのように活躍させていけるかを考えていきたいと思います。

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