レベニューシェアの時代が来る!?
2010年6月17日に銀座のアップルストアで行われたcss nite、この日のテーマは「レベニューシェア」。登壇者は頭ん中の増永 玲さん(@msng、イケメン、元高校教師)。
css niteには初参加でしたが、#cssniteginza48を見ると、今回は普段のWEB技術系と比べて大盛り上がりの大好評。講演後の質疑応答もいつもより活発だったよう。
ウェブ制作者は、気になっているトピックだということですね。5年後、10年後のインターネットの技術で仕事をしていくということの変化が無意識に共有されているように感じました。
というわけで、レベニューシェアについて考えたことを少し。
レベニューシェアって?
「売上を関係者で分け合う仕事やプロジェクトのスタイル」のこと。
WEB制作では、例えば100万円の受注をしてサイトやシステムを開発するのではなく、初期費用はゼロ円でECサイトを構築し、その代わり毎月売上の何%かを受け取る、というスタイル。
今日の講演を聞いてみての率直な感想は、
- これから増えていくだろうな、いい時代だな。
- 未整備なスタイルだからしばらくは模索が必要だな。
という感じ。
1の「いい時代」というのは、
「かっこいいウェブサイトを作ってお金をもらう」→「価値を生み出すウェブサイトを作る」
という変化がやっと起き始めたのかもしれないね、ということ。
2の「未整備・模索が必要」というのは、受発注とは違う形式なので契約・プロジェクトの進行のさせ方・信頼関係のあり方が定まっておらず、失敗ももめ事も含めて色々あるでしょう、と。
メリットとデメリット
今日の話の中で、挙がっていたメリットとデメリット。たとえばECサイトとかの場合。
- メリット
-
- お店
- 初期コストがかからない
- 継続的で自発的なカイゼンを期待できる
- チームになれる
- 制作者
- 継続的な収入
- パートナーとして組める
- 最初から完成図でなくてもよい
- お店
- デメリット
-
- お店
- レベニューシェアのイメージが持ちにくい
- 売上内のコストが増える
- 長期的になる
- 制作者
- 売れなければ全コストが赤字になる
- 常に関わり続けて良く必要がある
- 売上が落ちれば、それ以降は全作業が赤字化する
- お店
チーム的な関わり方
レベニューシェアの特徴として、発注/受注モデルと違い、お店とウェブ担当者の間に雇う/雇われるの関係性が薄くなる、というのがある。
それは、ECの場合ではお店が儲かればウェブ担当者の利益も大きくなるし、逆に売れなければウェブ担当者も作業分の赤字を負担することになるという意味で経済的に、結果に対して同じ利益/損失を引き受けることになるから。
儲かろうが儲からなかろうが同じ金額を手にできる発注/受注モデルとはぜんぜん違う。クライアントとサプライヤー関係ではなくチームになる、とも言い換えられます。
ウェブサイト制作の仕事の未来?
今後、ウェブサイトの制作という仕事はきっと減っていく。
WordPressなどのCMSの発展の仕方を見ていると、そう遠くない時期にhtmlとかcssとかあんまりわかんなくてもウェブサイトが作れるようになるだろうと思うから。
あと、これから5年後、20年後になっても今作られているような企業サイトとかってまだあるんでしょうか?ウィンドウズ95からツイッターの登場まで15年しかかからなかったことを考えると、なんか怪しい気がしています。
そういう時代にあって、今ウェブに携わっている人たちの仕事の仕方はどうなるかと考えると、単にサイトを作って納品するという作業屋さんとしての仕事はどんどんなくなっていくか利益のでない仕事になっていくはずです。
これからの理想のスタイル!
では、どんな仕事の仕方になっていくのか。
- 具体的に利益を上げる仕事
- コミュニケーションのお手伝い
- コンサル的な関わり方
増永さんも指摘していましたが、「サイトを作るといくら儲かるの?」という問いに、明確に答えられるウェブ制作者ってあまりいない。もちろん具体的にいくら儲かります、新しい仕事がこんなにいっぱい来ます!とか言えるものではないのでしょうがないのですが、今まではそこにつけこんで(?)、ちゃんと説明してこなかった。
けれどもこれからは、「こんな風にサイトを使えば、こういうふうに売れますよ(儲かりますよ)」とか「お客さんと近くなれてリピーターが増えます」とか「今までアクセスできなかったようなこんなターゲットとコミュニケーションとれるようになります」とか「こうすればクライシス対応も万全です!」とか、ちゃんと説明して、そういう知恵とか作業に対してFeeをもらう、というようなやり方にシフトしていける。
そういう中では、発注/受注という関係というお互いに向い合う(見積の金額という利害の対立を含む)関係ではなくて、同じ方向を向いて仕事が出来る(同じ結果で同じように利益が得られる)関係の方がやりやすい、そういう意味ではレベニューシェアは大ありであるな、と。
いつまでもずっと汗水たらし続けてお金を稼ぐのか
以前、検察庁の偉い人が、
額に汗して働く者が偉くってそれ以外は捕まえます
みたいなことを言って堀江さんや村上世彰さんを捕まえたことがありました。
もちろん、働くことに意味がなくてマネーゲーム万歳といいたいのではないです。でも、食べるために、家賃やローンを払うために、老後の不安を解消するために一生働き続ける、ということに対してみんな疑問を持っていると思います。本当は、楽しいこと、ワクワクすること、未来が明るくなるようなことを仕事にしていきたいと思っていると思うんですね。僕はそうなんです。
であれば、方法は多分2個で、
- 生活するのに十分なお金を手にして、嫌な仕事から解放される
- 仕事自体を楽しくする
僕が素敵すぎる!と思うのは、レベニューシェアってこの両方を同時に実現出来る可能性があるということ。
大当たりの商売やサービスの開発によって、受託では得られなかった大きな利益を得られる可能性、あるいは、一気に大きなお金を手にできなくても少しずつでも継続的にお金が入ってくる可能性、そのお金をもとにもっと別の何かを始められる可能性、なによりチーム的にお客さんと同じ方向を向いて仕事をしていけるという楽しさ。
なんか、いいですよね。
課題:相手にとって必要な存在でい続ける
「難しいのは儲かってから」
増永さんもおっしゃってましたが、レベニューシェアで起こりうる問題は、売上が上がって儲かり始めてから噴出する、と。プロジェクトのスタート時点では、同じように夢と目標を持って仕事に打ち込めます。ところが、売上が上がり始めると状況が少しずつ変わる。
- チーム内の作業量に偏りが出始める
- 長期になってくると、将来的にずっとお金を渡し続けたくなくなる
- そもそもの人間関係に亀裂が入る?
時間の経過、プロジェクトの進行、お金の動きとともに少しずつ色んなことが変わり問題が起き始めるだろうとのこと。
このとき僕が難しいなと思うのは、「レベニューシェアという仕事の仕方だからこそ成功した」ということをみんなが共有出来るかという問題。つまり請け仕事であればこんな風に自由に議論できなかっただろうし、モチベーションを高く持ち続けられなかっただろうし、苦しい時に耐えることができなかった、ということがプロジェクトの結果に対して大きく影響していたことを、問題が起きたときにみんなで思い出せるか、ということです。
増永さんは、「これを契約で解決するのか、信頼関係で解決するのか、きっと両方なのでしょう」とおっしゃってました。
常に次へみんなで進んでいけるか
こういった問題を解決する理想的な方法は、「常にみんなで進みながら解決する」という姿勢なんでしょう。
会場からの質問で「将来的に、金額や取り分の変更を考える感じですか?」という問いに対して、増永さんは「金額を変更するというより、その時に出ている課題を手のあいた人がやるとか、そういう風に考えるでしょうね」と答えていました。これは地味に凄くて、こういう切り返し方ができるからこそ、現在すでにレベニューシェアモデルで仕事を成功させられている、という司会の鷹野さんの指摘は素晴らしすぎると思うのです。
今、僕自身もこのような形で仕事をし始めているので、チームの方々とは契約の話もしつつ、強い信頼関係を築きあげていけるようにしたいと思います。
コメント
コメント一覧 (5件)
流れで拝見させていただきました。「レベニューシェア」っていうんですか。エージェントの仕事はずっとこのスタイルです。本気で組みたい相手と本気で仕事ができるので楽しいですよ。大変ですが。
CSS Nite in Ginza, Vol.48が終了しました #cssniteginza48
2010年6月17日、アップルストア銀座でCSS Nite in Ginza, …
受発注の関係ではなくチームとなるところが、発注側のリスクを抑え、受注側のモチベーションも増やすという好循環を生み出すと思います。あとは、レベニューシェアを容易にするやり方があればと http://bit.ly/96sJjG なことを以前考えました。
リンク先読ませていただきました!
レベニューシェア代理店業はいいですね。
受注や進行管理、配分調整などをやれば、1%でなく5%以上を受け取ることもできると思いました。
[…] レベニューシェアという仕事の仕方 – nskw-style、初期費用はゼロ円でecサイトを構築し、その代わり毎月売上の何%かを受け取る、というスタイル。 今日の講演を聞いてみての率直な […]