ePublishing port 第一回に行ってきましたので、簡単にレポートです。
講師は境祐司さん。
前半はDTP Boosterと同様でした。
前半のお話
つまり、
電子書籍を理解するための5つのポイントとは、
- フォーマット
- リーダー
- プラットフォーム
- ワークフロー
- プロデュース
である。
今日は1のフォーマットのお話がメインでした。
フォーマットには、
- リフロー系の.epub、.book、azw他
- 画像系のPDF他
- プログラマブルなアプリ系
があり、コンテンツの特性によって使い分けることが大事。
一方、ひとつのコンテンツを複数のフォーマットで供給する(=ワンコンテンツマルチフォーマット)も大事で、そうなってくると、コンテンツを効率的に各種フォーマットに落とし込んでいくためのワークフローが重要にる。
つまり、素材(抽象的なコンテンツそのもの=文章とか写真とか)とフォーマタイズされた最後のアウトプットの中間にくる中間フォーマット・汎用フォーマットという発想が必要で、そこの部分だけは業界標準を作ることが本来必要である。
中間フォーマットについて詳しく見ると、電子書籍というのは、はじめは文章そのものや写真などの素材であり、最後はPDF,Mobi/AZW、EPUC、.book、XMDFという多様なものがある。その中間に特定のフォーマットを作っておくことで、それをベースにして各種フォーマットに出力し、全体のワークフローを効率化することで利益につなげることができるだろう、それが中間フォーマットの意義である、ということ。
現在出てきている色々なソリューション(各種フォーマットへの出力を含んだ一括出版代行サービスやInDesignのプラグインのようなもの)はみんなこの中間フォーマットという視点で見て行けば分かりやすい、と。
ただ、そこの部分がまさに各企業のビジネスの肝になっており、企業秘密になっている。本当は、そこを業界で標準化した方が、業界全体が効率化されるので、そういったことの議論も現在進行中ではある。
後半では、以下のようなお話を聞くことができました。
ePubの売り方
iBookstoreに納品する形と、オライリーメディアのようにePubを自社サイトで売って、iBooksなどのビューワーアプリで閲覧して貰う方法。前者は日本ではまだ始まっていないため、現状では後者に限られる。
InDesignからの書き出しのポイント
- 段組などのレイアウトは、リニアライズ(線形化)によって消えてしまう。画像の位置や改行位置などがガタガタなのでそのままでは使えない。
- CS4まではフォント埋込なので、そのままでは売ることができない。
修正作業について
- リニアライズされたものをどのようにもとに戻すのか、あるいはいかに効率的にリデザインするか、というのが修正の中身。
- 今回は、iBooksでの閲覧を想定して、まずは仕様について確認すると、ポートレートモードとランドスケープモードが有る。
(iPadの場合は、ランドスケープモードの場合は見開きになる。iPhoneはならない)
フォーマットを検討した結果
- 今回、堺さんご自身の著書の一部を無料のEPUBとして配布するプロジェクトが進行中だが、
- PDFでは読めない。字の小さいところをズームしてスクロール、戻ってページめくりみたいなことを読者がやらないといけない。リフローじゃないとやっぱだめ。
- テキスト抽出機能というのがあって、スキャンデータを見せて本文はテキスト抽出でepubで見せるっていうのはやり方としてはある。どうしてもレイアウトを見せたい雑誌とか?今回は採用してない。
今回のやり方
- InDesignから書き出されたもの(要はxhtmlとcss)を直すよりは、素材からepub用に作ったほうが早い。
- ボックスの角丸をCSS3でやってみた(すごいきれいでした)
- その他の装飾も全部CSSで実施。(画像を使ってレイアウトを行うと、ユーザが文字サイズや行間を変更したときにダメになる)
- 段組をとってしまった(紙では左に本文、右に図版という形だったが、全てをインラインにした)
- Stanzaでのチェック→致命的にNGにはならないが、あまりにもマージンが広すぎる場合には調整をした
(調整は、両者で一定の綺麗さがでるポイントを探す、という調整。iBooks用/Stanza用という調整もできるにはできるが今回はしていない人のこと) - 改行問題が大きい。見出しなどでは文字を大きくすると変なところで改行してしまう→コストを掛ければどこが改行ポイントなのかを指定できるが全部にその指定をしているとコストが凄いので辛い。
(今回は、段組をとってしまうことで、十分な横幅を確保し問題を解消しているようでした)
将来はどうなっていくのか
将来的には、いくつかのフォーマットで提供したい
例としては、NewYork Timesのコンテンツ提供が素晴らしく、
- WEBサイト:新聞に似てる
- PC用のairを使ったアプリ:画面サイズに応じてレイアウト変わる
- iPhone版:レイアウト無し!
という風に同じコンテンツが、それぞれのデバイスに最適化された形で見れる。
こういうものを効率良く作れるようにならなくては。似たものが作れるソリューションが秋頃(?)出てくるのでは?と言われている。Adobeが夏にLabでだすのは、アプリ系なので、そのリフロー版で楽しみですね!
期待
・CMSが出てくるだろう
質疑応答の僕にとって興味深かったもの
Q,フォント、縦組、カラーマネジメントはどうするの?
A,まだどれもうまくできません。今後の課題です。
それぞれ、別々の方からの質問でしたがいずれもDTPの世界の方からの質問でした。
DTPでこだわって作っている部分について、電子書籍での限界点を知りたい、という気持ちが見てとれて興味深く感じました。
以上が僕のメモと記憶でのレポートです!
【感想/考えたこと】
- 技術的には未成熟な分野であり、まだまだこれから。
- ウェブサイト制作者が、その技術を活かしてepubオーサリングを受注する、という可能性は低そう。
→かなり自動化されうるそうだし、ツールの登場によってhtmlなどの操作はなくても電子書籍が出版できるようになるだろう。
→事実、色んなビューワーでのcss解釈を検証してどのビューワーでも読めるようなCMSの開発が進んでいるという噂があるようです。 - DTPの方々にとっては、「電子書籍=紙が電子化したもの」という発想から抜けることがなかなか難しいみたいだ。
それよりも別物として捉えて、彼らが持っているコンテンツ生産能力、クオリティコントロール能力を活かしつつ、ウェブのソーシャルな部分や共有、検索、おもしろマーケティングを生み出すという方向になった方が、電子書籍というものの可能性を活かせるのではないかとおもった。 - DTPとWEBの人たちがそれぞれ興味を以ている電子書籍ではあるものの、意識の上ではかなり差があるように感じたので、その辺を埋める役割が担えたらいいな。
堺さんの情報発信基地
今回の講師である堺さんのポッドキャスト、僕も毎回聞いていてすごく勉強になります。
毎日更新されていて、リアルタイムで電子書籍周辺の情報についていくことができますし、第一線に立っておられる方のコメント付きなので、非情に分かりやすいです。ぜひ、アクセスしてみてください。たくさんありすぎて、はじめはどこから聞いていいのか混乱しますが、まずはポッドキャスト登録をして聞き始めればいいと思います。
コメント
コメント一覧 (2件)
[…] This post was mentioned on Twitter by Shinichi Nishikawa, みはbot. みはbot said: ePublishing port 第一回に行ってきた – nskw-style: ePublishing port 第一回に行ってきましたので、簡単にレポートです。 講師は境祐 […]
当日参加出来なかった人でも概略がわかり「知識」の共有ができるすばらしいレポートですね。お疲れ様でした。